数年前から、就職活動の相談事を受けることが増えている。僕自身OB訪問によって得たものも多かったので、可能な限り対応するよう努めている。実際に会ってみると、各人各様に緊張してはいるが、自分なりの考え方やものの見方を披瀝してくれるので、こちらも参考になることが少なくない。
ところで、僕はOB訪問を受ける際に必ず「履歴書を持ってきて下さい」とお願いしている。資料があれば話題も作り易いと思っているからだが、最近の学生たちは判で押したように特技の欄に「パソコン:ワード、エクセル、インターネットリレーテッドソフトウェア」と書いてくるのでビックリしてしまう。インターネット関連ソフトとは、一体どんなプログラムを書いているのだろう。はたまた、ウェブを活用したシステム構築を研究しているのかと思い話を聞いてみると、実は単にメールソフトとブラウザを操ることが出来るというだけのことで、ワードやエクセルにしても、マクロを使いこなせるわけでもなく文字や数字を入力するだけのことを特技と称しているらしい。
20代の若者がそうしたソフトを使えるというのは何も特別なことではないだろう。どこかの就職セミナーでそう教えているのか、或いはネタ本の類いに書いてあるのかは分からぬが、皆揃いも揃って「僕はインターネットリレーテッドソフトウェアが使えます」と胸を張られてもこちらは困惑するばかりである。ブラウザやメールでどのような情報を入手し活用しているのかという点こそが重要である筈なのだが。
あの頓珍漢な造語を連呼する背景には、自分を大きく見せることが就職活動の目的と化してしまい、「ほら僕って凄いでしょう」と胸を張ることは出来ても、自分の存在が会社にどのようなメリットをもたらすか、ということを自分の言葉で説明し納得させる力も発想もない、即ちPR意識の欠如というものがあると思う。それは学生たちに限った話ではないような気もするが。


インターネットはからっぽの洞窟
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