眼が醒めると既にバスはリール駅に着いている。荷物をまとめて外に出る。が、ふと気づくとiPhoneがない。他のものは全て揃っているから、おそらく充電の為にテーブルに置いていた間に盗まれたのだろう。悔しいが仕方がない。取り急ぎ、こちらの携帯でKDDIのサイトを調べて、番号緊急停止の措置を取る。
リールからブリュッセルまで、TGVで30分ほどで到着。ブリュッセル南駅は、相変わらず永遠の工事中状態で、TGV用のホーム以外はボロボロ。まずは荷物をホテルに預けようと思い、地下鉄で市内へ。幸い、駅からすぐのところにホテルがある。まだ朝8時過ぎだから、チェック・インしなくていいから荷物を預かってほしいとフランス語で伝えると分かってもらえる。ロビーでゆっくりしてってください、と言ってくれたので、荷物を整理して、最低限のものだけショルダー・バッグに入れてからホテルを出る。徒歩で中央駅に出られそうだったので歩いてみる。難なく到着。心なしか駅が明るくなった気がする。そして、この駅にスターバックス・コーヒーのショップが出来ていて驚愕する。ルーヴァン・ラ・ヌーヴまでの往復乗車券を買う。学生時代は”Go Pass”という全線乗り放題の一種の回数券を使っていたから普通乗車券を買うのは何だか不思議な気分がする。急行の発車まで時間があったので、構内のパン屋でワッフルを買う。砂糖がジャリジャリ入っているリエージュ風で美味しい。急行でオティニー駅に向かい、向かいのホームに停まる鈍行でルーヴァン・ラ・ヌーヴへ。留学以来、実に15年ぶり。駅に降り立つと、駅前に見慣れない建物がある。なんと”Esplanade”なるなるショッピング・モールが出来ている。スーパーも洋服も携帯もCDも玩具も日用品も、何でも売っている。ここが本当に、あの何もなかったルーヴァン・ラ・ヌーヴなのかと愕然とする。街中を歩くと、ハンバーガーチェーンの”Quick”が出店しているし、昔は工事中だったところが綺麗な小径になっていて、おシャレな店が建ち並んでいる。グラン・プラスと呼ばれる中心部の広場には大きな映画館が出来ていて、再びビックリする。昔の映画館だった建物はどうやら大学の視聴覚室として活用されているらしい。その下にあった薄暗いハンバーガー屋は、大手チェーンが進出した今も健在だったので、何だかホッとする。本屋で絵葉書を何枚か買う。いつも食べていたワッフル屋は夏休みで閉店していたので、チェーン店と思しきお店で今日二度目のワッフルを食べる。美味しい。家族や友人に葉書を書いてから、再び街を歩く。とにかく、街が近代化を遂げていてビックリし続ける。昼食をどうしようかと思っていると、昔よく通っていたフリット屋が店を開けていたので、ミトライエット(フランスパンを縦に割り、フライドポテトの山盛りと、ハンバーグや魚のフライなどの具材を挟むジャンク・フード)を食べることにする。15年前と同じ店主が、当時と同じようにポテトに塩をかけている。完食してお腹がいっぱいになる。「旨いだろ?」と表情で語る主人はあの頃と全く変わらない。14時の電車でオティニーに出るが、ブリュッセル行き急行に遅れが出ている。昔、この駅で急行が5分遅れたので駅員に尋ねたら「5分なんて遅れには入らん」と言われたのを思い出す。何とかブリュッセルに辿り着き、北駅で下車。構内にあった筈の郵便局を目指す。果たして元通りの場所にあったオフィスで切手を買い求める。そして、その隣にスタバがあって再びビックリする。市電にひと駅だけ乗って、ショッピング・モールのCity 2へ。フランスやベルギーでしか売っていない、スキな絵柄のカードが欲しくて、ここにあるカード屋に行きたかったのだ。難なくお目当てのものを見つけてお買い上げ。昔は地下にあった”fnac”は上層階に移っており、村上春樹の”La ballade de l’impossible”(『ノルウェイの森』)を買う。前に行ったニースでは売っていなかったのだ。ヌーヴ通りを歩いてグラン・プラスに向かう。「世界三大がっかり」のひとつとして知られる小便小僧も久し振りに見る。気ままに歩いているうちに、前回妻とここを訪れた時は楽しかったな、一人はつまらないな、という気持ちがどんどん募ってきて気持ちがしょげてしまう。少し気を持ち直して、ホテルに一度戻ってから再び中心部に取って返し、”Léon”の本店でムール貝の夕食にする。美味しい。女性の給仕が釣銭を間違えたので、レシートを見せてきちっと回収する。食後、またワッフルを食べようかと思ったが、お腹がいっぱいになったのでやめておく。

La ballade de l'impossible
La ballade de l’impossible

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Haruki Murakami
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