およそ20年前、僕が留学で日本にいなかった頃のこと。

11月に3日間開催される学園祭の、最終日のサークルのイベントに向け、大学構内のバックヤードで皆して作業していた時、部長の先輩が
「本番に向けてステージを下見してくる」
何人かを引き連れていなくなったそうな。

そして随分時間が経って、御一行が帰還して曰く
「いやー、食った食った」
つまりは下見といいながら実際にはお気に入りの取り巻きと作業をサボって模擬店で買い食いしていたのだった。

残って作業していた人たちは、悪びれもせずニヤニヤしている部長を横目で眺めながら
「自分は彼のお仲間には入れて貰えないんだ…」
ある種のカーストの存在を覚らされたと、後になって僕は後輩の一人から打ち明けられた。

確かにあの頃、部長と同じ学科の人たちが異様に固まっていたとは思うけど、なにぶん僕はその場にいなかったので、それがどれほど緊張した場面だったのかは分からないし、些細な出来事を僕が大げさに伝えられただけなのかも知れない。

そして、作業中のサボりといっても、連れて行って貰えた別の当事者から見れば、
「学祭でご馳走してくれた太っ腹な部長」
という印象にもなろうし、部長の庇護を当たり前に受けている側からすれば
「自分が仲間外れだとかいう連中は被害妄想だ!」
といった批難が飛び出すやもしれない。
そこにウソはないだけに、一概に否定することも難しいのではないか。サークル内の力関係があればなおのこと。

昔話を持ち出して誰が悪いなどと言いたいのではなくて、今でも僕が教訓にするのは、ある事実への評価が一つに定まることなんてことは極めて稀という自覚が必要だということ。そして、自分の眼に映る事柄だけで物事を決めつけたり、あまつさえ他人を責めるのは慎まねばならないということ。

いろんな物の見方が錯綜する中で、それでも僕はフェアーな視座を持っていたい。
そしてフェアーである為に、何が必要なんだろう。

風に吹かれて
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