現在の東京都知事、石原慎太郎が国会議員生活を振り返る現代政治史。


作家の眼で覗いた、国会議事堂の住人たちの生き様の描写は実に興味深い。三木武夫宮澤喜一を「愚図」と切って捨てる一方、竹下登を「一種の天才」と褒め上げるなど独特の見方に読者の賛否両論はあろうが、折々に見せる浜田幸一への愛情あふれる視線が何とも微笑ましい。

国家なる幻影〈上〉―わが政治への反回想
石原 慎太郎
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国家なる幻影〈下〉―わが政治なる反回想
石原 慎太郎
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作中に見られる筆者とそれを取り巻く関係者の発言をいくつか引用しておきたい。とりわけ筆者自身の台詞は、貴方自身が今振り返ってみなさいよと言いたくなるものがなくもないのである。
1975年、筆者にとって唯一の選挙での敗北である東京都知事選での挿話。毎回立候補していた全日本愛国党の赤尾敏が、自らの政見放送で筆者を評してこうのたまう:

「美濃部は石原のことをファシストと呼んでいるが、石原はなぜ言い訳などするんだ。それでいいじゃないか。みんなはファシズムが何なのか知ってるのかね。これはね、イタリア語で、束ねる、ばらばらの薪を一つに束ねるということだよ。それはいいことなんだ、きわめて大事なことだ。今の日本を見たまえもうばらばらじゃないか。それをきちっと束ねる仕事を石原がやるべきなんだ。私は彼に期待してるんだよ、彼がこの東京できちっとファシズムをやることをね。」

東京都民は、ファシストの登場をこの後24年間待つことになる。
金権政治の一掃を掲げて筆者も加盟していた党内組織「青嵐会」の幹部だったハマコーがラスベガス賭博でスった巨額のお金の算段を、あろうことかロッキード事件で騒がれていた小佐野賢治に依頼していたことが発覚して、青嵐会としては極めて格好悪い状態になってしまった時、筆者がハマコーに投げかけたひと言:

「李下に冠を正さず、だな」

偶然の出会いから終生の友となり、のちにマルコスに暗殺されてしまうベニグノ=アキノ(アキノ・フィリピン大統領の夫君)への科白:

「俺はただ君に忠告しているんだよ。そんな君の一番の魅力、君の一番美しいところ、みんなが誰よりも君を愛するその訳こそが君を損ねてしまいかねないんだ。」

(おまけ) 石原慎太郎に関連して読んでおきたい本:

石原家の人びと
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石原 良純
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石原慎太郎くんへキミは「NO」と言えない
浜田 幸一
ぶんか社 (1999/06)