海外に行く際に、飛行機内や現地の空港で書く入国カードには国籍欄があります。フランス語では”Nationalité”と書かれています。


僕は男性なので属詞は男性形(Japonais)であるべきなのですが、”Nationalité”は女性名詞なので、女性名詞に対する属詞はやはり女性形にするべき、となると記載すべきなのは”Japonaise”ということになります。しかし、理屈の上では女性形というのは分かっていても、男性の自分が女性形を書くことに長らく凄い違和感を覚えていたので、社会人になるまではずっと”Japonais”と書いてきました。
しかし、フランス語に堪能な上司と共にモロッコに出張した際、その上司が何のためらいもなく”Japonaise”と書いているのを目撃して以来、憑き物が取れたように「あ、女性形でもいいんだ」と思い直して、それ以降は”Japonaise”と記すようになりました。
思い返してみると、フランス語を学んできた環境がずっと男子校だったので、女性形は文法のルールの上での変化に過ぎず、大学に入り、女性が圧倒的に多いフランス語の講義で”Je suis contente” “Je suis étudiante”などという発音を耳にして、「あ、本当に女性形って使うんだ」という軽いショックを覚えたものでした。
してみると、長らく抱いてきた抵抗感は、男子校での12年間が築いてきた、女性に対する見えない障壁だったのかも知れません。

今すぐ話せるフランス語単語集
橘木 芳徳
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