(承前)
 
少し間が空いてしまいましたが、その理由は別途述べるとして、過去の経緯に触れておかねばならないと思います。
 
僕はもともと、同窓会の活動というものにまったく無縁で、実家に届く会報だけが唯一のつながりと言えました。
同窓会が在校生の就職支援の為の会合を催しているという話は、会報で何度か読んだことがありましたが、僕にとっては無縁のお話というか、今まで声がかかったこともなければ、いつどのように運営開催されているかも分かっていませんでした。
 
そんな状況に変化があったのは、SNSの発達でした。2013年のこと、フェイスブックに「上智大学フランス語学科同窓会」というページがあることを知り、同年11月に就職懇談会を開催するとの案内が掲示されていたのでした。
 
当時僕はイタリアに駐在していたので、この懇談会に参加することはないだろうなと思いつつ、連絡先に書かれていた同窓会役員の山岸真太郎さんという方に手伝えることがあればという趣旨のメールを書きました。ところが、会社の都合で急遽10月末に帰国することになった為、山岸真太郎さんからも是非にとお声がかかり、思いがけず出席することとなりました。
 
実際に参加してみると、現役の学生さんたちは揃って真剣で、思っている以上に就活に向けた不安が大きいであろうことが感じられました。そして、その一方で、運営や仕切りに少なからぬ違和感を覚えたのも事実でした。
というのも、毎年開催しているという割には、同窓会側は、講師役たる卒業生に対して、事前に懇談会の式次第もなければ、話して欲しい内容もロクに教えてくれないのです。あたかも、卒業生の頭数を揃えることが目的で、懇談会の中身には関心が乏しいのかと勘ぐってしまいました。事実、懇談会の進行は「講師役が各人の自己紹介をして、その後自由にグループ・ディスカッションをしてください」というもので、自由にというのは聞こえは良いのかもしれませんが、事前に講師役に関する情報がインプットされていない(同窓会役員がその場でホワイトボードに氏名と勤務先を書いていました)学生さんたちの質問は、その場でひねり出した表面的なものにならざるを得ないのではないかと僕は思ってしまいました。
 
「ミズノさんの働いてきた業界は、残業が多いんですよね」
「うん、でもどんな会社でも残業はあると思うけど」
こんな会話を交わしても、それが彼や彼女の進路にどれだけ役に立つというのか、僕には疑問符がたくさんついて回ってしまいました。
実際のところ、意欲のある学生さんからは、あとになってOB訪問をさせて下さいという連絡があり、僕なりに出来る限りの対応をしたつもりだし、そうした、先につながるきっかけという意味では決して懇談会の対話が無駄だったわけではないのですが。
 
そして、山岸真太郎さんからは
「当日は会場の図書館9階にいらしてください」
という連絡があったのですが、図書館の入館方法の案内もなく(在学中の経験から、入館時にチェックがあることを知っていましたから)、僕から問い糺すまで、誰も入り方を教えてくれませんでした。
段取りというかアレンジメントというのか、卒業して時間の経った卒業生が、招かれたその場でまごつかないようにするにはどうしたらいいのか、何を話したら現役学生とスムースに懇談が進むのか、という想像力が全然ない人たちなんだなというのが率直な感想でした。卒業生には一切報酬が出ないことは事前に告げられていたことで、完全なボランティアというのは僕も納得承知のうえで参加しましたが、だからといって、かりそめにも自分たちが招待している人間をぞんざいに扱って良いというものでもないでしょう。
懇談会後には飲み会の席を設けていただいて、学科の恩師たちともお話しすることができて、それは非常に楽しかったのですが、その後同窓会側からお礼のメールのひとつも来ません。別にお礼を言えとクレームしたいのではなく、学生からの感想やフィードバックといったフォローアップが全く無い、ボランティアで協力した結果を全く見せてもらえないのは奇妙に思えてなりませんでした。
 
そもそもの話、この懇談会は平日の17時開始という社会人の都合なんぞハナから考えていない時間設定で、つまるところ大学の5時限目の時間帯に当てはめているだけ。普通の会社員の定時勤務時間は9時5時なんて言い方をしますが、この懇談会に参加するには、講師役は全員会社を早退せねばならないことになります。僕も勤務を調整して、上司にお伺いを立てて、自分の有給休暇を削りました。
招待される側にそこまで負担をかけるイベントでありながら、同窓会側は、随分と杜撰なコーディネイションをするんだなと思いましたし、その一方で、学生の視点に寄り添った姿勢とも思えず、つまるところ自分たちの実績づくりのアリバイありきなのかなと感じてしまいました。

そうは言っても、外野が文句だけ言うのは簡単なことであって、実際に取り仕切る人たちには当事者にしか分からない苦労があるのだろうし、その点は慮る必要があると僕は思っていました。

(つづく)

段取り力――「うまくいく人」はここがちがう (ちくま文庫)
筑摩書房 (2013-08-02)
売り上げランキング: 8,809