不世出のスター、石原裕次郎の生前のインタビュー音声を書き起こしたもの。

口伝 我が人生の辞
口伝 我が人生の辞

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石原 裕次郎
主婦と生活社
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自らの生い立ちや、兄・慎太郎についての言及も多く、同じ情景を『弟』とは違う視点で描いているさまが興味深い。
 
そんな中で、ひときわ眼を惹いたのがこんな爆弾発言。

テレビの視聴率っていうのは、ありゃ化け物だね。僕のような映画屋育ちでも、視聴率には振りまわされてる。勝ちゃん(勝新太郎)が言ったように、そんなものに振りまわされたくないけど、結局、テレビ界ではそれしかバロメーターがねぇんだよね。
だから僕も、視聴率なんていい加減なものだといまだに思っている。詳しくは知らないけど、僕がいつもおかしいと思うのは、視聴率にはビデオリサーチとニールセンと二種類あるけど、うちの『西部警察』がニールセンでは二十何パーセントいって、ビデオリサーチは十四パーセントとかね。六とか七とか八とか、めちゃくちゃに違うわけ。両者の差が一パーセントくらいの差なら − 仕組みはどうあれ − そうかな、と思わなくもないけど、六パーセントも八パーセントも違っちゃえば、何百万人ぐらいの差になるわけだ。そんなもの、信用してられないよ。
これは、ハッキリとは言えないんだけど、ビデオリサーチは電通だよね。電通の息のかかっている番組は視聴率が高くなって、そうじゃない番組が低くなるのはしょうがないんだよね。
報知なんかがやってる報知リサーチってのがある。そうすると、4チャンネル関係とか、いわゆるグループのものはよくて、他は極端にTBSなんかが悪くなったりする場合があるわけ。
だから僕は、ビデオリサーチなんていうのは、電通の息がかかって不公平だと思う。じゃ、ニールセンは正しいのかというと、これもよくない。信用出来ないシロモノだね。
なぜかと言うと、我々は、あれが本当に正しいのかどうか、調べようがないんだ。僕たちみたいに、いろいろな人を知っていて、友達が多くて、友達のまた友達というのがけっこういるわけだけど、その中に、装置がついている家が一軒くらいあったっていいじゃないか。石原プロの社員の友達の友達の親戚のまた親戚に、一軒くらい装置がついていたっていいじゃないか。一人もいないからね。
だから装置の数も知らないし、何分の一の率なのかも知らないけど、ちょっと眉ツバというかね、箝口令を敷いて極秘でやっているにしても、その装置が家についていれば、
「ウチにいま、あるよ」
って言うさ。
そんなヤツ、聞いたことがないもの。
だけど、いま言ったように、いくら”お化け”であっても、局にしても我々にしても、対象にするバロメーターはこれしかないんだよな。

 
収録時期は不明ながら、最晩年だとしても昭和62年(1987年)の時点で、ビデオリサーチと視聴率の胡散臭さを、いわばテレビの側の人間である裕次郎さんがここまで的確に指摘しているのは凄いことだし、石原裕次郎だから言ってしまえる、文字にできてしまうことなのだろうと思ってしまった。