母校の大学で入学式があり、出身学科(外国語学部フランス語学科)に男子が20名も入学したそうな。定員60名だから実に3分の1。僕の代が14名で、それでも例年の倍と騒がれたので、平素どれだけ女性が多いか分かるだろう。12年間男子校で過ごした僕にとって、この女子校状態は過激にタフな環境だった。女性が多くて羨ましいなんて言われても、ちっとも同意できなかった。

フランスにはパリテ法という、政党の男女比率を1対1にする法律が2000年に施行され、これをもって男女平等を推進するということらしい。卒業間際の仏作文の授業で、当時審議中だった同法案への自分の意見を書くことが課題になった。
僕は敢然と、以下の内容を書いて提出した:
「当該法案には全く反対。代議士は性別ではなく能力で選ばれるべし」
「本学科は定員60名中毎年50名近くが女性。パリテ法が適用されれば入試の成績に関わらず20名が自動的に入学拒否となる。その時彼女たちは『入試は性別ではなく能力で選ばれるべし』と不平を言うのではないか」
「コーヒーと紅茶は違うものであって俄かに優劣を論じるべきものではない。平等を推進する為にピッタリ半分ずつ混ぜて飲みなさいと法律で強制されても美味しくない。好きな時に好きな方を選んで飲む方がどれだけ良いか。Vive la différence!(違い、万歳!)」

最後の一文は、自他の違いや各人に備わる個性を賛美する定型句なので挿入したのだが、同時通訳者の故・村松増美氏によれば、このフレーズの本当の意味は、男と女がひとつになって果てた時に「神様、違う形につくってくれてありがとう!」との感謝なんだそうな。

女性である先生の意向には沿わないであろう回答をした挙句にそんなスラングを入れてしまったけれど、成績は”A”だったから悪い評価ではなかったんだろう。その先生も既にこの世の人ではないのだが、むかし話をふと思い出してしまった。
 

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