携帯電話もメールもなく、恋人の家に電話を掛けようとすれば向こうの親に出られることを恐れ、遠距離恋愛となればテレホン・カードが必須。iPodもMDもなく、音楽はカセット・テープで聴くのが当たり前だったあの頃 − 1980年代後半の若い恋愛を描く青春小説。

イニシエーション・ラブ (文春文庫)
乾 くるみ
文藝春秋
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あの時代のヒット曲の数々がチャプター毎のサブ・タイトルに散りばめられ、懐かしさと同時に、自分の若い頃の幼い恋愛を思い出して恥ずかしい気持ちにもなるのだが、最後の最後まで読み切って、しかもその後少しだけ考えてみると、この小説がミステリーに分類されている理由がじわじわと分かってくる。僕自身、ハッとする薄ら寒い気持ちを覚えずにいられなかった。

読み手の好みが分かれるきらいはあるかも知れないが、肩肘張らずに楽しんで読みたい一冊。