ブーちゃんなる渾名のデブで内気な主人公が入りびたる文芸部に、突然かわいい新入部員の女の子が来た! ハカセなる愛称の部長と繰り広げられる、非モテ男子たちの奮闘と、女の子やその友達にまつわる意外な事実。そして、題名の空色メモリの中にあるのは…

空色メモリ
空色メモリ

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越谷 オサム
東京創元社
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越谷オサムの作品を読むのは3作目だが、ストーリーの合間にある、本筋と関係なさそうな感情の描写や科白が今回も光る。

おれはあえて黙っていた。嘘と隠し事の上に成り立っている脆いものだけど、この平和な空気をぶち壊しにする覚悟はおれにはない。

口が堅いことは知っている。でも、その堅い口を難なく滑らす軽率さも知ってる。だから心配なんだが。

「なぁ、先生ってそんなに『なるほど』って言ってるかな」「言ってるよね」「言ってますね」ハカセと野村さんが頷きあうと、吾妻先生は「なるほど」と呟きながら廊下に出ていった。

あさのあつこ『ガールス・ブルー』の男子版と言えなくもないが、少年少女たちの内面により斬りこんだ、爽快な青春小説。