広告代理店の営業のことをアカウント・エグゼクティブと呼ぶようになって久しい。
この片仮名の肩書を引っさげて「俺、カッコイイ」みたいに振る舞う人を見たこともあるんだけど、元々は商品先物取引業者の外務員を指す言葉。

すなわち、お客の勘定(アカウント)を約定(エグゼキューション)する係の意味であって、エグゼクティブは高位にあるという意味ではない。

広告屋がメディアの広告枠をお客に成り代わって買うのも、先物取引でお客に成り代わって小豆の相場を張るのも、その本質においてさしたる違いはないということなのか。

先日、勤務先が東京ビッグサイトの展示会に出展したのだが、当初は参加するつもりはなかった。
しかし、出展社が集まらず困っているので何とか出てくださいと、主催者(ある経済紙系列の出版社)に頭を下げられ、料金も激安にしてくれたので出展を決めた。

そして当日、その出版社の部長の腰巾着のように、広告代理店(その経済紙の名前が社名についている)の社員が随行してご挨拶に見えた。
見た目がチャラいので年齢は推定し難かったが、僕と同じか少し年下くらいの、その代理店氏が主催者に成り代わっての現場を取り仕切っている由。

世間一般には、広告代理店というと、テレビや雑誌広告の企画制作を手がけて有名人が行き交うような、華やかでクリエイティブな世界を想像してしまうけれど、実際には学園祭の実行委員会みたいな業務、それもグループ企業のおこぼれで回ってきた仕事、そして名前も製品も知らない外国企業の課長(僕のこと)にまでヘコヘコして回るなどということは、恐らくは彼が就職活動していた頃の未来予想図には描かれていなかったのではないか。

それでも、学生さんたちはマスコミ系とかいう華やかそうなイメージに惑わされてしまうのかなぁ、ただの外務員でしかないアカウント・エグゼクティブが何だか特別な職業かのように思ってしまうのかなぁ、などと思ってしまった。

 

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