朝5時前に起きて仕度。徒歩で東京駅に向かおうかと思ったが、思いのほか時間がかかってしまったのでタクシーを拾う。中央線はまだ快速運転をしておらず、オレンジ色の各駅停車で新宿へ。あずさ71号は臨時列車らしく、国鉄色の旧塗装。全車禁煙の筈だがもともと喫煙車だったのか、ほのかにヤニ臭い。電車が動き出してほどなく眠りに陥り、石和温泉で眼醒める。甲府で身延線に乗り換え。東花輪駅まで妻に迎えに来てもらい、実家へ。雌犬はとりあえず小康を保っており、僕が近づくと尻尾を振ってくれる。夕方、いよいよ呼吸が覚束なくなり、急いで病院へ。獣医の診断によると、癌細胞が気道を圧迫しており、進行と共に呼吸困難が進んできた由。心臓が丈夫だったのでこれまで生き永らえてきたが、これ以上手の施しようがないので、やむなく安楽死を選択する。麻酔薬をオーバードーズさせて雌犬は静かに眠りにつく。お別れという悲しみと、人間の意思で手をかけてしまったという罪悪感がないまぜになってくるが、ともかくも、苦しみから解放された雌犬が、とても安らかな顔をしていたので安心する。妻にとっては僕よりも長い付き合いの犬たちが、僅か1ヶ月半で相次いで逝ってしまったことになる。帰宅して、即席の通夜をする。


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山川 健一
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