日本航空と全日空の社長同士の会話:

「なぜぼくのところは事故を起こすのだろう。なにか欠陥があったら教えてくれ」
といわれたことがあった。
「じゃあ一ついいましょう。大先輩のあなたにむかってだが、重役組織の構成に問題がある。世界中探したって、そんな航空会社はありませんよ。これだけ人命をあずかるいわば危険な仕事なのに、直接そこに結びつく技術系の重役さんがいなくて、事務屋さんばかりで計画をやるのは、非常によろしくない。」
そう申し上げた。

城山三郎・編 『「男の生き方」四十選 (上)』 文春文庫 より

驚くなかれ、教えを乞うているのは全日空の美土路昌一社長で、諭しているのはこ日本航空の松尾静麿社長である。逆ではない(1969年頃の話)。


整備ミスや、それに起因するインシデント(重大な事故に至らなかった故障)を連発する日本航空は一体どうなってしまっているのだろうかと、傍で見ていてとても不思議に思う。規制緩和政策によって機体整備の海外委託が急速に広がったこと、原油高などの影響でコスト削減圧力が強いことなど、理由は挙げられるのかも知れないが、それはライバルの全日空にしても条件は同じ筈であって、組織あるいはそれを束ねるマネージメントに重大な欠陥を抱えているとしか言いようがないように思う。客の安全が第一、というのは当たり前のことのようだが、当たり前のことを粛々と行うことは、この世の中では思うほど簡単ではないと思う。そして、それを行うことが出来る会社が、一流と呼ばれるのだと個人的には思っている。今後の日航に注目したい。