朝、殆ど寝られぬまま家を出る。夜明け前のジェノバはヒンヤリとしている。ピアッツァ・プリンチペ駅は工事中なことと、早朝ということも相まって異様な雰囲気。客層も観光客というよりは行商の移民のような姿が目立つ。
国境ヴェンティミリア(ヴァンティミル)行きの鈍行に乗り、開いている4人席に腰を下ろす。しばらくすると、イタリア人と思しき夫婦が同じボックス席にやってくる。ほかにも2人が座れる席はあるだろうに、相席は黒人よりも日本人の方がマシ、ということなのだろうか。日焼け止めを顔や首筋や腕に塗っておき、うとうとしているうちに電車はヴェンティミリアに到着。前回、ニース行きのチケットを買ったフランス国鉄の代理店は閉店しており、長蛇の列のイタリア国鉄の窓口に並ぶほかなくなる。長蛇といってもグループ客が多かったと見え、思いのほか早く自分の番が回ってくる。無事、切符を手に入れてマントンへ。駅の券売機で、オンライン予約した道中の切符を発券しておく。結構な量になる。マントンは6月に来たばかりだが、真夏のこの時期にもう一度来てみたかったのだ。1992年、即ち21年も前のことだが、高校のホームステイでこの街を訪れた。生まれて初めての外国の街の印象が今でも強い。絵葉書を買い、切手を売っているかと訊くとノンとの答え。ただ、タバ(煙草屋)なら売ってるとのことで、旧市街寄りの店に行ってみると、外国向けの切手が揃っており無事購入。前回と同じく、海岸を歩いて、旧市街を巡る。昼食はムール貝にする。山盛りのムールとフリット(フライド・ポテト)に満足する。午後もあちこち散歩して回る。夕方、鈍行列車でニースに向かう。夜行列車に乗る前に夕食を済ませておきたいが、さてどうしようか考える。携帯電話の充電をしたいし、お手洗いにも行っておきたい。そう思うと選択肢はいきおいファスト・フード店に絞られ、メインストリートにある”Quick”で済ませる。電車出発の30分前に店を出てプラットホームへ。かつては「トラン・ブルー」即ちブルートレインの愛称がつけられていたが、今は単に”Intercités”(インターシティ=都市間連絡急行)の一列車でしかない。それても、昔なつかしい3段寝台のクシェットに収まる。頭上のスペースの広い最上段を希望していたのだが、満席で下段しか取れなかった。やはり分かっている人が多いのだろう。それでも久し振りの夜行列車が嬉しくてワクワクしてくる。列車は10分近く遅れてニースを発車。タオルで身体を拭き、Tシャツを着替えて早々に横になる。
ポリスター (1999-06-30)
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