「パリ到着20分前です」との車掌の車内放送で眼が醒める。降りる支度をしておく。パリ・オステルリッツ駅は初めて。昔のトラン・ブルーはリヨン駅発着が基本だったのだが、恐らくはTGV網の発展とともに、リヨン駅のホームを奪われていったのだろう。東京駅の新幹線ホーム拡張で東海道線のホームがどんどん削られていったのに似ているかも知れない。
北駅まではメトロで1本だと思っていたら、工事中で代行バスになりますとの掲示。それでは時間が読めないので、セーヌ川を挟んで反対側にあるリヨン駅まで歩いて、別のメトロで北駅に向かう。そういえば、パリからユーロスターに乗るのは初めて。フランスの出国手続きと、英国の入国手続きが続けざまに行われる。フランスの係官に突然「コニチワ」と言われ、俄に意味がわからず問い返してしまう。「まさかフランス人が日本語を話すとは思わないだろ?」と言い訳する。イギリスの係官はフランス語を解さず、例によって居丈高な調子で渡航目的やら滞在日数やらを訊いてくるが、無事にスタンプを押される。押印場所がユーロスター恒例の”Channel Tunnel”ではなく、単に”Paris”になってしたのが少し残念。出国後のコーヒースタンドでパン・オ・ショコラを買い、ユーロスターに乗車。座席が反対向きだがしょうがない。久し振りの海底トンネルに潜り、ロンドンのセント・パンクラス駅に到着。ユーロスターというとウォータールー駅の印象が強いのだが、ともあれ下車して地下鉄でパディントンに向かう。オイスター・カードを買って5ポンドだけチャージする。パディントン駅には、おなじみのクマが売られていたが、荷物になるので買うのは諦める。小腹が空いてきたので、ひき肉入りのパイを買って車内で食べることにする。オックスフォードには14時過ぎに到着。2007年に妻と来て以来だから6年ぶりになる。駅のそばにあるB&Bを予約しておいたので、まずは収まる。女主人が笑顔で迎えてくれる。古めかしい家だがそれなりに清潔で安心する。荷物をおろすと、早速市内を歩き回る。秩父宮殿下寛仁親王殿下がご留学されていたモードリン・コレッジをまずは見ておきたかったのだ。入場料を払って内部を見学。実に古めかしい建物だが、これらがみな現役なことにビックリする。”New Building”という校舎があるが、これが実に1733年建立なのだから恐れ入る。秩父宮殿下のご足跡がどこかにないものか、見て回っていると、コレッジの売店に日本の鎧甲冑をプリントした絵葉書が売られていて”Gift of Prince Chichibu”の説明書きを発見する。こんな僅かなものでも、往時を偲ぶものを見つけられて満足する。皇太子殿下が2年間過ごされたマートン・コレッジは夏休み中で内部見学が中止されていたので、外観のみ見学する。近くのクライスト・チャーチ教会のそばのスタンドでティー・ブレイクにする。濃い紅茶にミルクを混ぜる典型的な英国式。再び市内を散歩し、土産屋でカフスボタンやネクタイを買う。パブでフィッシュ・アンド・チップスシャンディ・ガフを頼み、早目の夕食にする。旅先では酒を飲まないようにしているのだが、シャンディなら悪酔いはすまいと思い楽しむ。揚げた魚もフライドポテトも美味しい。食後、酔い醒ましに街中を散歩してから宿に戻り、シャワーを浴びる。よく寝られるように睡眠導入剤を飲んでおく。
 

The Thames And I: A Memoir Of Two Years At Oxford
Prince Naruhito
Global Oriental
売り上げランキング: 163,918