1997年9月、山一証券廃業。それは傍目には突然の出来事だったが…

会社がなぜ消滅したか―山一証券役員たちの背信 (新潮文庫)
読売新聞社会部
新潮社
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「これだけは、言いたいのは、私らが悪いんであって、社員は悪くありませんから! どうか社員に応援をしてやってください! お願いします! よろしくお願い申し上げます。私達が悪いんです。社員は悪くございません。」

最後の社長、野澤正平が、あの記者会見に臨むまでに何をしてきたのか、何が起こっていたのか…

業容拡大に邁進した歴代経営者たち。2,648億円という途方もない簿外債務に言葉を失いながら、会社の再建に奔走し続けた現経営陣。その日に至るまでのドラマが克明に描かれ、読者を引きつけて離さない。

本書の取材・執筆の中心となったのは読売新聞社会部次長で、後に巨人軍球団代表になる清武英利。近年、球界で波紋を呼んだ彼の行動の是非や真意はよく分からないながら、社内にはびこる権威に唯々諾々と従い、明白な問題から目を背ける組織が一体どういう末路をたどるのか、責任を負うべき立場の人間が問題から逃げればどういうことになるのか、は本書において幾度となく指摘されていることで、彼自身が巨大組織の責任者になった時に、何も言えない、言わないままでいることは出来なかったのだろうということはおぼろげながら想像出来る。また、蛇足ながら解説は、今まさに別件で話題の佐野眞一

本書の初出は2000年だが、2012年現在の視点で読むと、ひと味違った読後感が湧いてくる。これだから読書はやめられない。