気がつくと朝10時。パリ上空の天候が依然良くないらしく、着陸までややもたつく。11時過ぎに着陸するが、ボーディング・ブリッジではなくバス移動となり時間を喰う。今回はすんなり入国し、12時丁度の電車でパリ市内に向かう。レアールで下車して地上に出ると、思いのほか雨の降りが強い。7年前アルジェリア出張の帰りに立ち寄っていた「レオン」で昼食にする。ブリュッセルの本店昨年食べて以来、久しぶりにムール貝のワイン蒸しにありつく。フリット即ちフライドポテトは食べ放題、とのことだが最初のひと山が大きくて、とてもお代わりなどできない。デザートを選べたので、ワッフルの生クリーム載せにする。生クリームが文字通り山のように盛られていて満足する。


地下のショッピングモール「フォロム・デ・アール」にあるfnacで西仏辞典と漱石『こころ』の仏訳版を買い求める。再び地上に出て、近所にあるアニエス・ベーでシャツを買う。雨脚が収まらないので、タクシーを拾う。パリのタクシーは、バスレーンを走ることが出来、複雑な一方通行もあまり意識しなくて良いのでスイスイ走ってくれる。オスマン通りに出てプランタンで買い物をする。ニューヨークの「キールズ」が進出していたので、妻が愛用しているリップとハンドクリームを買う。店員に、「このリップは色つきよ。大丈夫?」と訊かれたので「良く知ってる。妻が使うから問題ない。」と答えておく。ひと通り冷やかした後、隣にあるスーパーマーケットのモノプリで、バターなどを購入。時間がなくなってきた。急いでタクシーに乗り、車内で買った物の整頓をする。液体類は機内に持ち込めないので、カバンを一つ預ける必要が出てくるだろうが、既に25kgの荷物をスルーしており、エクセス・チャージ云々という話になったら厭だなぁと思う。空港までの道路は一部渋滞していたが、概ね順調で20分程度で到着。団体客のチェック・インは既に終わった後と見え、カウンターには人影もまばら。乗る飛行機は日航だが、グランドスタッフはエールフランスの社員。これまでの経験から、有色人種の方が融通がきくことを知っているので真っ黒な若い女性のところで荷物を預けたい旨告げる。すると、成田までの便がアップグレードの適用を受けているとの通告。思いがけず嬉しい報せだが、とにかくも荷物を頼む。何も言わずにタグをつけてくれ、ひと安心。チェック・インが終わって職員嬢曰く、
「アビジャンから来たの? 私のふるさとなの」
「貴女、イヴォリエンヌ(コートジボワール人)なんだ。いい街だったよ」
渡した航空券にはパリ→東京しか書かれていない筈だが、恐らくは僕の搭乗に関するデータが全てディスプレイに出ているのだろう。ガラ空きの出国ゲートを抜けて、免税店で買い物をする。日航406便に搭乗しようとすると、ゲートがいつものF56ではなくF44だという。おかしいなと思っていると、バス移動になる由。日航のパリ便に乗ってバス移動になるのは初めてなので吃驚する。今朝のエールフランスといい、恐らくは大雨の影響で大混乱なのだろう。ターミナルから大分離れたハンガーの前に佇むボーイング777-300に搭乗。日航のビジネスクラスに座るのは3年ぶりだが、フルフラット・シートだし文句はない。ほどなく飛行機は離陸。本当は離陸の最中に電子機器を使ってはいけないのだが、夕焼けをデジカメに何枚か収める。夕食は、洋食を希望する客が多いらしく、僕の順番になる頃には和食しか残っていないという。客室乗務員はしきりに恐縮するがどちらでも良かったので構いはしない。久しぶりの日本米も、メインディッシュの鱸も美味しくて満足する。エアラインとしては、日本の航空会社だから和のこころで、と意気込む一方で、乗客としては、これから日本に帰るんだからわざわざ和食じゃなくてもいいよな、とヨコメシを選ぶのだろう。シートを倒して、少し横になるがどういうことか、寝つかれない。

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