だだっ広いクアラルンプール国際空港のターミナルをうろうろ歩き、免税店や土産物屋を見る。マレーシアリンギットの価値がよく分からないので、空港内の両替所でレートを眺めてみる。かなり分の悪い換算レートの筈だが、それでも売られているものが安く感じられる。酒、タバコ、チョコレートなどのありきたりな免税品のほかにも、地元マレーシアの民芸品も売られていて楽しい。一通り眺めた後、マレーシア料理の店に入り鶏肉のサテと焼飯を食べる。甘辛いタレが美味しい。深夜になり、パリ行きマレーシア航空20便の搭乗が始まる。フランス人が多い。前に並んでいた婦人のリュックサックのチャックが開けっ放しだったので、「開いてますよ。閉めましょう」とフランス語で言うとビックリされる。乗り込んだB747-400は成田から乗ったB777と同等の装備だが、機内は空いてお3人掛けを2人で占拠することが出来た。ぐっすり眠って朝6時15分にドゴール空港に到着。第1ターミナルは卒業旅行以来だから4年ぶりということになる。サテリットと呼ばれる到着ゲートから、古めかしくも前衛的なビルディングに入り入国審査。日本人はパスポートの中身も見ずに通してくれる。トランクを受け取り、洗面所でコンタクトレンズをつけてからエイビスレンタカーの事務所へ。朝早く不機嫌そうな女性の係員とあれこれやりとりしているうちに鍵を手渡される。フランス車なのかと思いきや、宛てがわれた車はオペルのメリーバ。やや背が高い1600ccの5ドアハッチバックで、日本では見慣れないが、ホンダのフィットやメルセデスのAクラスと同等だろうか。エンジンに火を入れる前に窓ガラスを拭き、買っておいた「スーパーレインX」を塗り込んでおく。これはスペースシャトルの窓ガラスにも採用されているという撥水剤で、降雨時にワイパーを動かさなくとも水を弾く効果があり、水膜やワイパーで視界が遮られることがない。やや面倒な作業だが入念に仕上げておく。出発前にネットで調べておいたルートマップを用意していよいよ出発。6年前、知り合いのスバル・インプレッサを運転させてもらって以来のマニュアル車だが、とりあえずエンストはせずに動き出す。だが、いきなり駐車場の進行方向を誤ってしまう。已む無くバックしようとするが、どうやってもリバースギアに入らない。1速や2速に一回入れてから舐めるように入れると良いのを思い出しそれをやってみるが入らない。よく見ると、シフトレバーにフックがありこれを引っ張りながらゲージを動かすと難なく入る。誤ってリバースに入れないための安全機構らしい。初っ端から躓いたがなんとか出発。ドゴール空港は高速道路と直結しているのでパリ方面の案内に従ううちに高速に入る。ぐんぐんシフトアップして速度を上げていく。生まれて初めての右側通行だが、高速にいる限りそれほど気にはならない。パリの環状線から北西への高速道路に移り、最初のサービスエリアで小休止。小雨が降り始める。売店で飲み物とミシュランのドライブマップを買い求め、カフェでパンを買う。朝早いのに種類が豊富なのに驚く。コントアール(立飲台)では中年男性たちがやたらと大声で騒いでいる。長距離トラックの運転手だろうか。高速に戻ると雨がひどくなってくる。レインXを塗っておいたおかげで視界は至って良好、舗装も水煙の上がらないタイプなので快適に運転を続ける。ルーアン、カンを経て雨も上がり、13時過ぎに最初の目的地モンサンミッシェルに到着。島に入る前のレストランで昼食。妻と2人で定食をシェアーする。前菜は鮭と野菜のサラダ、メインは羊肉、デザートはアイスクリームにカルバドスをかけた一品。どれも美味しく、店も繁盛している。雨は止んだが風が強く、テラスに並んでいた机と椅子が薙ぎ倒される。食後、再び車を走らせていよいよモンサンミッシェルに到着。駐車場に車を止めて城砦内に入る。予約した宿は1階がレストランで、ホテルはあくまでもおまけ。部屋はこじんまりとしているが清潔で風呂場は全面的に改装されている。部屋から海は見えないが、この島唯一のストリートが見渡せる。観光地としての賑わいはどこかしら、浅草の仲見世を連想させる。荷物をまとめて島内を観光。教会に登り、眺望を楽しむ。強風に煽られて寒くなってきたのでカフェでコーヒーを飲み、クレープを頼む。こうした間食を楽しむために昼食を軽くしておいた。そば粉入りのブルターニュ風クレープと、普通の甘いクレープを試すが、どちらも美味しい。夜、ホテルのレストランでムール貝を食べて眠る。