最近、雑誌の書評欄や書店の店頭で、メンタリングやコーチングに関する書籍を眼にします。
僕自身も、そうした本を読んでみたこともありますが、
「わざわざマニュアルや教則にして身につけることなのかなぁ、こんな言動をオフィスでしていたらわざとらし過ぎねぇか?」
という印象は拭い切れません。
僕がこれまでに接してきた上司の何人かは、実に素晴らしいメンターでありコーチャーであったと思います。しかし、彼らは何もマニュアル通りに僕に触れてきたのではないでしょうし、「わざわざ僕のためにしつけをしてくれているんだ」とその場で気づかせてしまっては、本当の意味での教育にはなり得かったのではないかと思います。
いわゆるマニュアル本の類いは、先達の積み重ねてきた経験なり実績のエッセンスとなる部分を分かり易くまとめているから有用なのだ、という意見もあるでしょうが、昨今の関連書籍の多さには、言葉に出来ない違和感を覚えています。ちょうど、就職活動において「OB訪問くらいしないと」「企業研究しなくっちゃ」「自己分析しとかないと」といった風に、あたかも大学入試の過去問を解くかのように、タスク自体が独り歩きしてしまい、企業に入って働くことで自分自身をどう表現したいのか、という就活における主題がなおざりになってゆくのと似ているかも知れません。
そして、もう一つ気になるのは、メンターやコーチャーと呼ばれる人たちは、恐らくは部下にとってはとても頼りがいのある存在に映っていることでしょうが、その責務を負っている彼や彼女たちは、自分自身の想いを一体どうやって吐露し、抱える悩みを誰に打ち明けているのか、ということです。
そんなことまで考えていたらキリがないよ、と言われてしまいそうですが、部下が育っても上司がヘトヘトになってしまっては元も子もないような気がしますし、僕自身がそんな立場に置かれたら、一体何が出来るのだろうかと考えてしまいます。


プレイング・マネジャー―現場と管理職を兼任する人のためのコーチング術
本間 正人
PHP研究所 (2006/03)
売り上げランキング: 9051