ある地方都市の、落ちこぼれ高校生たち。彼女や彼の、過ぎるほどありふれた日常がひたすら綴られている。ヒロインが白血病で倒れるような、突飛な出来事が起きることもない。


ガールズ・ブルー (文春文庫)
あさの あつこ
文藝春秋
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あたしは、うなずいた。今がいい。今が楽しい。ずっとこのままでいたい。時が、還流すればいいと思う。流れ去っていくのではなく、ぐるぐるとただ、巡り流れてくれればいい。あたしたちは、いつまでも今のあたしたちだ。ときどき、本気でそう思う。同時に、突き抜けたい、遠くに、高く、この街を突き抜けて、今までと全然別の自分を見つけたい。そうも思う。真反対にある二つのものを、同時に手に入れる魔法ってないだろうか。

こんなに若々しい青春の日々が懐かしいなと思うと同時に、あの頃に戻れはしないこと、読み手の自分が歳を取ったことに、否が応にも気づかされて仕舞う。
カレシ、カノジョ、クラスメート、家族、学校、進路…
十代の若者の青い日々と、それを取り巻くものたちが、実に活き活きと描かれている佳作。