いわゆる「セカチューブーム」の頃にこの本は読みませんでした。加えて言えば映画もドラマも見ていません。


ブームになりかけた頃、薄幸の美少女が白血病で逝くというベタな筋書を聞いて敬遠してしまっていたのですが、最近妻が図書館から借りてきたので、読んでみました。

世界の中心で、愛をさけぶ 小学館文庫
片山 恭一
小学館
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サクとアキが瑞々しい青春を過ごしていたことは伝わってきますが、近しい人を亡くしたならば誰もが経験しているであろう、こころの中の深い闇、不意に襲ってくる張り裂けそうな悲しみの感情、というものが全く読者に迫ってきません。そして、白血病という病魔に冒された人間が味わうであろう未曾有の苦しみ、痛みが全く描写されず、単にお別れの悲劇を演出するための材料にされているだけ、という印象すら受けてしまいます。
あちこちの場面で、描写ではなく唯の説明文になってしまっているような、きわめて真っ平なストーリーだからこそ、後に映画やドラマの脚本家なり演出家が、自由に情景を膨らますことが出来たと言えるのかも知れません(未見なのであくまでも憶測です)が、重厚な恋愛物語を期待してこの本を読むと、文章の薄さ・軽さにびっくりしてしまうことは確かです。

(おまけ) 白血病に関連して読んでおきたい本:

神様、何するの…―白血病と闘ったアイドルの手記
吉井 怜
幻冬舎
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