かねて知り合いだったエンジニアのスティーブ・ウォズニアック(通称ウォズ)と共にアップル・コンピュータを興したジョブスは、極端な完璧主義者であった。
創業当初、アップルのリンゴのマークは6色(米国式の虹色)に色分けされており、普通に印刷すると色と色の間が滲んでしまうから、各色の間に罫線を入れたらどうかと広告代理店に言われると、印刷代がいくらになってもいいから滲まない方法で印刷するようジョブスは命じた。
1970年代当時、コンピュータといえば政府機関や大学などで動かす、冷蔵庫のような巨大なマシンのことだったが、ウォズが設計し1977年に発表した”Apple II”は、世界初のパーソナル・コンピュータと呼ばれ、世界的なヒットとなった。ウォズのつくるApple IIのロジックボード(基盤)は非常に美しいレイアウトであったと言われており、ジョブスもこれを気に入っていた。
が、偏執ともいうべき完璧主義と彼自身の短気な性格も禍いし、創業者でありながら1985年には会社を追われてしまう。そこで彼は新たなコンピュータ会社を設立するが、Appleが切り拓いたパーソナル・コンピュータの次に来るものをつくるという意図を込めて社名を”NeXT”とした。
NeXT社で、部下がつくってきたロジックボードを一目見て、ジョブスは作り直しを命じた。その理由:
「美しくないから。」
部下が慌てて反駁した。
「だ、誰がこの基盤を覗くっていうんですか!」
「誰って、僕が覗くのさ。」
Steven Paul Jobs (1955?)
Apple Computer社 CEO, Pixar社 CEO
1997年にNeXTはAppleに買収され、ジョブス自身もAppleに復帰。
その後のAppleはiMac, iPodなど、美しく機能的な商品の展開を続けている。
東洋経済新報社
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