故・宮脇俊三の著書『時刻表昭和史』に、高校時代に勤労奉仕で戦闘機の整備を手伝ったくだりがある。「国民が聖戦の為に自発的に」というのが建前だろうがこれも一種の”Forced to work”かも知れない。だが、戦時中に誰が強制されたか否かを明確に区分できるものなのか。
  
区分といえば、内鮮一体政策を進めていた日本政府は「朝鮮人」という呼称を許さず日本人として同等に扱おうとして、朝鮮名による差別を避ける為に創氏改名が広まったのが自然だと僕は思っている。その証拠に戸籍上の本姓は残されたし、所謂在日の人の「通名」として現在も生きている。そんな国策をよそに、朝鮮出身者だけが軍艦島で強制労働を強いられたというのだろうか。少なくとも無給の使役ではなかったことは明らかで、炭鉱労働は楽な仕事ではなかったろうが、キツイ仕事だからこそ収入が見込めたのだろうし、不況の内地にあって外地出身者が職種を選びづらかったことは想像がつく。それをあたかもナチスのユダヤ人狩りや強制収容所を想起させるような言い方をするのは、後世のファンタジーというものではないか。
 
加えて言えば日韓が併合した1910年時点で朝鮮半島の警察官の数は7712名、うち朝鮮人が4440名との記録がある。もし本当に強制連行があったのなら、現地人だけを選んで連れ回す強制力はどこから出てきて、あれほど賑やかな自己主張をする現地人が、過半数を占める警官を含め誰も抵抗しなかったのはなぜだろう。自然に考えれば、強制連行などできないのではないか。
 
とはいえ、朝鮮半島出身者への差別が皆無だったかといえば、絶対にあっただろうとは思う。現在の日本人の間でさえ「アイツは○○県から出てきた田舎者」なんて差別表現があるのだから。そうした出自による差別(とりわけ帰化した在日の人)はなくすべきと思う一方で、何が何でも日本人が極悪非道という根拠なき感情論は慎むべきと思う。
 

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