息子が「ヒコーキでりょこうにいきたい」と言うので「じゃあどこにしようか。国内かなぁ。外国だと遠くなるけど、台湾なら近いかな」と応じると、「たいわんって、せんそうがあるの?」と問われてギョッとする。
「台湾は今は戦争がないけど、周りには怖くてズルい国があるから、注意しなくちゃいけないね。誰だって戦争はしたくないけど、例えばジャイアンがいじめてきたら、やっつけないといけないでしょ? 台湾も日本もドラえもんのひみつ道具はないけど、ジャイアンにやられないための準備はしなくちゃいけないんだよ」と説明すると、何となく分かったような顔をする。「台湾は漢字だらけの国で平仮名がないから、もう少しお兄さんになって漢字が読めるようになったら行こうね」と言って話を収めたけど、どうして台湾=戦争という発想になったんだろうかと、我が息子ながら驚く。
確かに、以前台北市内で古いビルに「この建物の地下は空襲警報が発令された時に防空壕として利用される」旨のプレートが貼ってあるのを見たことがあるし、戦争は彼らにとって対岸の火事ではない。
米国は台湾との断交後も「台湾関係法(TRA: Taiwan Related Act)」という事実上の軍事同盟を維持していて、台湾が敵国に攻め込まれた場合には米国が助ける取り決めがなされているが、日本と台湾との間にはない。
我が国の集団的自衛権を巡る議論が盛り上がって久しいが、日本が自発的に他国と戦争をするケースを勝手に想像して騒ぐ報道は多くても、日本の隣国が侵略された場合に日本をどう守るのか、についての話はあまり聞かれない。台湾を攻めてくる国があるとしたら、その次に標的にするのが、台湾島から至近距離にある尖閣諸島から沖縄にかけての日本領であることは明白で、そうなってしまう前に、我が国と価値観を共有する民主主義国家である台湾との集団的自衛権について真剣に考えても良い頃ではなかろうか。