(承前)

さて、時間が経過してしまいましたがご報告です。
「圧倒的な強み(PS)を引き出すコンサルティングオフィス Y-プロデュース 野竿達彦」氏より、2月末日に郵便が届きました。A41枚のワープロ打ちで、署名も押印もありません。全文引用します。

拝復 水野信隆様

警告書、拝見させていただきました。
不快な思いをさせてしまい申し訳ございませんでした。
本コラムの内容ですが、2009年夏頃、朝日新聞の天声人語よりこの話(事実)を知り、参考になりそうな情報をキーワードにより検索し集めていたところ、水野様のブログに行き着き、内容を読ませていただき参考にさせていただいたものと記憶しています。決して盗用しようと思ったわけではございません。
またご指摘の通り、個人が創作した小説、コピー等においては「〜氏の〜から引用」という言葉を添えさせていただいておりますが、本件につきましては、エピソード(事実)についての文章であった為、「水野さんの文章を参考」といった注記が必要である、という認識がございませんでした。
確かに認識の違いはあったものの、水野様に不快な思いをさせてしまったことにつきましては誠に申し訳なく思っております。
なお、本コラムにつきましては、2月14目をもって削除させていただきましたのでご了解下さい。

敬具
平成25年2月14日
野竿達彦

追伸 送付費用の八百円につきましては、切手にて同封いたしましたので、お納めください。

 
うーん、一応謝罪の姿勢は見せていただいていますが、あくまでも参考にしたのであって盗用したのではないと主張されています。
改めて、僕と野竿達彦氏の文書を並べて見ましょうか。
 
僕のブログ記事:「臆病者と呼ばれる勇気」 2007年12月22日付

40年以上前の話ですが、1966年に、ハワイから飛んできた日航のDC-8「瀬戸号」が濃霧の羽田空港に着陸しようとして、目前まで来ながら滑走路を視認できず、計器着陸装置もなかった当時は、悪天候時の着陸が極めて危険であったために、機長は福岡空港へのダイバート(目的地変更)を決断しました。
乗客からは、「目の前まで来ていながら九州まで行かされるなんて」と不満の声が一斉に上がりました。しかし、彼らが福岡空港のロビーで眼にしたのは、テレビの臨時ニュースでした。
「カナダ航空機が羽田で墜落・炎上」
直後に飛んでいた別のDC-8が着陸に失敗していたのでした。先程までの機長への不満はたちまち賞賛へと変わり、乗客たちは我が身の無事を喜びあったといいます。以来日航では「臆病者と呼ばれる勇気を持て」という格言が浸透するようになったといいます。

野竿達彦氏の心に残るコラム:「臆病者と呼ばれる勇気を持て」 2009年7月21日付

今から40年以上も前の話です。1966年、ハワイから飛んできた日航機「瀬戸号」、濃霧の羽田空港に着陸しようとしましたが、目前まで来ながら滑走路を視認できず、悪天候時の着陸が極めて危険であったため、機長は福岡空港へダイバートを決断。
乗客からは「目の前まで来ているのに…」不満の声が一斉に上がりました。しかし、彼らが福岡空港のロビーで眼にしたのは、テレビの臨時ニュースでした。
「カナダ航空機が羽田で墜落・炎上」
直後に飛んでいた別の航空機が着陸に失敗したのです。機長への不満はたちまち称賛へと変わり、乗客たちは我が身の無事を喜びあったといいます。以来、日航では『臆病者と呼ばれる勇気を持て』という格言が浸透するようになりました。

(Microsoft Wordによる文書比較:赤字部分が両者の異なる箇所)
pakuri

これだけ同じの文章が並んでいても「エピソード(事実)についての文章であった為、『水野さんの文章を参考』といった注記が必要である、という認識がございませんでした」だそうです。
参考にしただけで盗用ではない、事実に関する感想だから他人の文書を参考にしたことは明記すべきという認識がなかったんだそうです。

しかし、それは認識があろうとなかろうと、著作権法における出所明示の義務違反という立派な犯罪行為です。まして、サイト上で野竿達彦氏は「自分の著作物だから全ての権利は自分のものだ」って主張していますよね。認識がないから盗用の罪を逃れられると主張されるのなら、そんな法令遵守の認識の乏しい方が他人様にコンサルティングだとか講演などで商売してていいものなんでしょうか。最近の企業や自治体は、コンプライアンスには本当にうるさい筈なんですけど、こういう見え透いたシラを切って逃げ通そうとする方にわざわざおカネを払って「圧倒的な強み(PS)」の教えを乞うんでしょうか…
 
また、ダメ押しで繰り返しますが、「乗客たちは我が身の無事を喜びあった」という一文は僕の創作であって全く(事実)ではありません。僕の創作を丸々コピペしておいてなお、「エピソード(事実)について述べたものだから盗用ではない」と主張されるおつもりなのでしょうか
(他人の文書をここまでお手軽にコピペして、かつ自らのコラムとして発表してしまう手管は実に見事ですが、果たしてあの記事に掲載されていた日航機の写真はどうだったんでしょう。もしも、全く同じ日の同じ時間に成田空港で別の方と全く同じ画角で野竿達彦氏自ら日航機に向けカメラを向け、帰宅後、その別の撮影者の方と全く同じ日の同じ時間に同じアプリケーションで同じサイズの画像を生成したのであるならば、盗用という表現は極めて不穏当になりますので、ここで性急な判断をするのは差し控えるべきかも知れませんが)。
 
それ以前に、そこまで盗用ではないと言い張るのならば、「心に残るコラム」を、件の盗用記事だけでなく他の過去記事を丸々削除する理由は何なのでしょうか。僕自身、警告書において記事を削除しないよう要求しているのですが。
 
僕が警告書において「記事を削除しないこと」を要求したのは、何も野竿達彦氏に意地悪をしたいのではありません(見知らぬおじさんに盗用などという底意地の悪いことをされてるのは他ならぬ僕ですよね、念の為)。問題は、当該盗用記事を野竿達彦氏の著作として眼にしてしまった不特定多数の読者に対して、どうやって落とし前をつけるのかということです。
 
野竿達彦氏の文書の題名はいみじくも「心に残るコラム」であって、コラムは野竿達彦氏の心に残る為ではなく、不特定多数の読者の心に残ることを企図しているのは明々白々ではないでしょうか。
野竿達彦氏が盗用を償いたいと思っているのならば、言い方を変えれば野竿達彦氏の盗用(歴然たる法律違反、違法行為)によって僕が被っている損害が最低限補償される為には、「心に残るコラム」に触れて盗用記事が心に残ってしまっている不特定多数の読者に対して、事実を知らせることが必要ではないでしょうか。
雑誌でも新聞でも、誤報や捏造があれば直ちに訂正記事が出るのが当然であって、記事を消したからそれでおしまい、になるわけがありません。
 
結局、野竿達彦氏は僕に謝るふりをしつつ、盗作盗用という自らの犯罪行為の事実を隠蔽し、自分の身を守ることしか考えていないんだな、という印象しか持てません。
 
付け加えると、野竿達彦氏からは内容証明郵便の送付費用として80円の郵便切手が10枚同封されてきましたが、実際の費用は1,470円なんですよね… 【(1) 郵便料金(定形):80円、(2) 内容証明料:670円(文書2枚分)、(3) 書留料:420円、(4) 配達証明料:300円】
 
警告書に金額を明記しなかった僕がいけないのかも知れませんが、実コストについてひと言問い合わせることもなく、キチンと調べることせず、一方的に切手を送りつけてハイおしまい、ってことにしたいんでしょうか。コンサルタントを生業にしている方にしては随分適当でいい加減な仕事ぶりにも思えますが、それこそが野竿達彦氏のいう「圧倒的な強み(PS)」なんでしょうか。やれやれ。
 
ともあれ、野竿達彦氏から書面で謝罪があったので、現時点で、これ以上のアクション(通報、訴訟等を含む)を起こすことは当面保留したいと思います。
ただし、野竿達彦氏が警告書における僕の要求事項を満たしていない以上、本件(野竿達彦氏による記事盗用事象)は未だ解決していないということを、茲に確認しておきたいと思います。
 
万が一、野竿達彦氏ご本人やその他関係者が「本件は謝罪したので解決済み」と主張されるようであれば、予告なしに法的手続きを取りますので、あしからずご了承ください。
あるいは、野竿達彦氏が「俺は盗用などしていないのに、水野信隆なる男が勝手に盗用と主張している! 誹謗中傷はけしからん!」と主張されるのであるならば、どうぞすぐにでも法的措置をお取りください。誰が正しいことを言っているのかが司法の場で明らかになるのならば、そのほうがむしろスッキリして良いでしょうから。
 
(未完)
 

追記:
今回の野竿達彦氏による盗用に関して色々と調べている中で知ったのですが、著作権法は必ずしも親告罪ではないんですね。

参考: 著作権法における罰則規定の概要(文部科学省サイト)

上記サイトによると、現行法で「出所明示の義務違反者」「著作者名を偽って著作物の複製物を頒布した者」は非親告罪、即ち第三者による告発が可能になっているようです。
野竿達彦氏が突然「心に残るコラム」を全削除してしまった背景が、おぼろげなから理解できそうな気がしました。