田中角栄の口癖のひとつ、「箱根山 駕籠に乗る人担ぐ人 そのまた草鞋を作る人」


起業家精神旺盛な若者(僕もまだ若いつもりですが)にこの短歌を紹介すると、決まって「あぁ、駕籠に乗る人になりたいですねぇ」というコメントが返ってきます。それはそうでしょう。僕もそう思います。でも、駕籠に乗って箱根山を越えるには、武家の格式に相応しい大名行列を組まなければなりません。費用は全部自腹です。駕籠を担ぐ人がしっかり訓練されていなければ、駕籠の中にいる自分が怪我をする恐れもあります。丈夫な草鞋をつくる人がいなければ、皆まともに歩けなくて立ち往生してしまうかも知れません。家臣を上手く励ましたりおだてたりしてやる気にさせなければ、皆好き勝手に歩いて隊列を乱してしまうかも知れません。スケジュールが遅れれば全部自分の責任だし、対応を誤ればお家断絶、切腹です。そもそも、駕籠の中にいると外の景色が良く見えません。それでも自分が一番偉くて何でも知っているという顔をしていなければなりません。人の上に立って組織をマネージするのは物凄く大変なことだと思うんですが、皆さんそこまで考えてらっしゃるのかしらん。
ちなみに、角さんが件の短歌を口癖にしていたのは「政治というのは人目につかないところで一所懸命働くのが大事」ということを言わんとするがためだそうです。
参考図書: 『社長失格 ? ぼくの会社がつぶれた理由』 板倉雄一郎・著 (日経ビジネス)