タイトルが直截だけど、副題の通り「彼女たちはなぜ男に求められない?」という現代の疑問に挑んだ書。

20代女性がセックスしてない  彼女たちはなぜ男に求められない? (角川oneテーマ21)
杉浦 由美子
角川書店(角川グループパブリッシング) (2011-12-10)
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中身を読んでみると、必ずしもセックスレスにだけ焦点を当てたものではないことが見て取れる。著者が本当に伝えたいのは、本文にある

今、「社会性」(「コミュニケーション能力」とも言い換えられる)は人の価値が決まる判断基準になっている。現在、人間の価値を決めるのは「社会性」の高低である。

誰しもが社会で生き抜いていくことを最優先にしなければ今、誰しも恋愛よりは社会性を優先しないと生きていけないのだ。

との指摘であろうと思われる。

社会性、コミュニケーション能力なる得体のしれないもののものがクローズアップされるにつれ、セックスという、ある意味で最もわかりやすいメッセージ、男女をつなぐ最も直截なショートカットが、ショートカットたりえなくなっている理由を、筆者は明確に追求こそしていないが、つまるところは自分が大事、自分だけが大事で、自分が悪者になることだけは丁寧に避けてゆき、自己に相対する他者を深く理解しようという思考が希薄な現代っ子の姿が浮かび上がってくる。

多くの取材で実際に若者に会って聞いて得たナマの声は新鮮で、筆者自身が感じる一種のジェネレーション・ギャップを隠さずに筆を進めていることが読者の共感を呼ぶのかも知れない。