朝6時過ぎに起き、いつものように床掃除。朝食後、出発準備をして10時過ぎに家を出る。予定では、乗り換えの東銀座で羽田空港行きに接続する筈だったのだが、早く着いたので久里浜行きの快速特急に乗る。勿論、予定の電車まで待っても良かったけれど、ひとたび遅延が起こるとどうにもならないので、先を急いでおく。京急蒲田で、本来乗る筈だった電車を待つ。と、乗車口の前であからさまに割り込もうとする老人が現れたので、僕は荷物を突き出して無言で制する。年寄りが座りたい、座れないという事情を理解しない訳ではないが、脇から入ろうとする俊敏なご壮健さを見せつけられては、若者としても張り合わない訳にゆくまい。

初めて降りる羽田空港国際線ターミナル駅は、改札を降りてエスカレータを上るといきなり出発ターミナルが眼前に拡がる。どこかしら、フランクフルト空港のような雰囲気もある。早々にチェックインしようとすると、搭乗予定の中国国際航空182便は出発が遅れる、とのアナウンス。北京でのトランジットは3時間近くあるけれど、遅れは北京周辺の悪天候の影響、とのことでちゃんと乗り継げるのか一寸不安になってくる。とはいえ、カウンターも開いていないので、いかにもガイジン受けしそうな「江戸小路」を見て回り、改造社書店で猪瀬直樹・著『地下鉄は誰のものか』を購入。そうこうしているうちに、搭乗便が約1時間遅れで出発することになり、チェックイン・カウンターへ。中国国際航空はスター・アライアンスに加盟していてこの便も全日空とのコード・シェア便で、僕もANA便として発券して貰っているのだが、カウンターにいるのはなぜかJALの制服を着た係員。アライアンスとは関係なく、地上業務をJALグランドサービスに委託しているのだろうが、何だか不思議な気分ではある。ともあれ、無事搭乗券を手に入れる。中国語で「登机牌」と書かれているのが興味深い。さっさと出国して、免税店を見て回る。就航便の絶対数が少ない所為か、静かでゆったりしていられる。出発ロビーの喧噪の大多数は、単なる見物客なのだろう。今日は母の誕生日なので電話をしておく。ひとしきり見物した後、ANAラウンジに入る。昼食は取らずに機内食で済ませるつもりでいたのだが、出発が遅れたので、ここで天ぷらそばを食べておく。ここでも人が少ないので静かに過ごす。それにしても、エコノミークラスや国内線普通席のサービスが年々悪化しているのに、一握りの会員にだけに供されるラウンジの設備や飲食物には随分とおカネが掛かっているように見える。大多数の乗客を蔑ろにするような施策が、いつまでまかり通るものか、いささか不安にもなる。搭乗時刻より少し早めにラウンジを出て免税店に向かい、買おうかどうか迷っていた品物を購入して、ゲートに向かう。出発ゲートのアナウンスも当然JALの係員がやっているのだが、彼女たちの口から「本日もスター・アライアンス・メンバー中国国際航空並びにANAの共同運航便をご利用頂きありがとうございます」という言葉が出てくるのには矢張り違和感がある。中国国際航空182便はA321-200。今回はエコノミークラスなので後部に落ち着く。荷物の置き場を確保してから腰を下ろす。昨日あまり寝ていないこともあり、機内では積極的に寝ることにして離陸前から眼を閉じる。眼が醒めるとミール・サービス。チキンかビーフかと聞かれたので、チキンを所望する。食事を取り、コーラを飲んでまたひと眠り。それにしても、客室乗務員は愛想がなく英語も話さない。定刻より約1時間遅れを維持して北京首都国際空港に着陸。飛行機が止まる前から、我先に荷物を取り出し始めて機内が騒がしくなる。飛行機だと思わずに、この国の長距離列車だと思えばこんなものかも知れない。ボーディング・ブリッジではなくタラップを降りバスで移動する。ターミナルは巨大で、ひたすら歩いて乗り継ぎ用のゲートに向かうが、ウランバートルまでの搭乗券を発券して貰わねばならない。最寄りのチケッティング・カウンターでは対応できないというので、入国審査カウンターの前にいた係官に話しかけると、何と日本語で「トージョーケンあるの?」と聞かれる。ないから発券して貰いたいんです、と告げると、これまで歩いてきたのと反対側にあるカウンターに行くよう告げられ、そこでも発券が無理なら一旦入国してモンゴル航空のカウンターに行くと良いと言われる。テクテク歩いてカウンターに行くと、モンゴル航空の札は立っていなかったが、発券はしてくれてひと安心。乗り継ぎゲートを通過して、だだっ広いロビーで時間を潰す。免税店も開いているので、息子にパンダのぬいぐるみを買う。搭乗時刻が近づいてきたので、少し離れたゲートまでまた歩く。丁度搭乗が始まるタイミングだったので、行列の先頭部分に並んでとっとと機内に入る。MIATモンゴル航空224便はB737-800。モンゴルの民族衣装を着た年配の乗客が目立つ。機内食は、ランチボックスのようなものが供される。食後、目を瞑り、耳栓をして眠る。気がつくと飛行機は着陸態勢に入っており、程なくチンギス・ハーン空港に定刻22時55分に着陸。機内から歓声が上がる。上司が入国審査にやや手間取るが、無事入国して、出迎えのエージェント差し向けのクルマで市内に向かう。これまで2回の出張時とは違う「チンギス・ハーンホテル」に泊まる。チェックインして部屋に入ると、リビング・ルームとベッド・ルームが別々になった広いつくりなのでビックリする。水回りはやや古びているが、ベッドやソファーは新しくなっているらしく、またテレビもサムスンの大型液晶テレビが両方の部屋に備わっていて申し分ない。旅装を解き、衣服をクローゼットに吊して風呂にお湯を入れる。風呂に入って26時前に床に就く。長い1日が終わる。

この厄介な国、中国 (WAC BUNKO)
岡田 英弘
ワック
売り上げランキング: 70787