眼が醒めると既に朝5時過ぎ。オレンジジュースと、小さなクロワッサンとチョコパンが出てくるのでかじる。ドゴール空港にはほぼ定刻に着陸。ボーディング・ブリッジに出るとすぐさま携帯を取り出し、既にアルジェリア行きのロビーにいる筈の先輩と連絡を取る。ターミナル2Eから2Fまで歩き、乗り継ぎゲートで取締役や他の同行者とお別れ。


まだ朝7時。13時半のフライトまで時間があるが、市街に出る元気もないので空港の中をうろつくことにする。一回フランスに入国しようとするが、行列に支那人が沢山並んでいる。僕の番になると、お前もシノワ(支那人)だろうと言ってくる。
「パスポート見れば分かるだろう。俺は日本人だ」
「いーや、シノワだろう」
「お前には眼が幾つついてるんだ? パスポートを見ろ!ジャパンってアルファベットで書いてあるだろうが!」
激昂すると向こうも反駁して
「そもそも君はどこから来てどうして我がフランス共和国に入国するのだ」
などと言ってくる。
「私は商用で旅をしておりマラボから到着しこれからアビジャンに向かうがフライトまで時間があるため入国を選択した。我々日本国民はビザなしで貴国に入国する権利がある。」
落ち着いて言い返すと、ほどなく解放される。やれやれ。とにかく時間が有り余っているので、空港内の新交通システム“CDGVAL”に乗って第1ターミナルへ移動してみる。空港としての利便性は今一つだが、建物を貫くあのチューブ型エスカレータはいつ見ても美しい。かつて藤子不二雄が『ユートピア』で描いた如き未来都市がここでは現実として存在する。ターミナル内のコーヒースタンドでクロワッサンとカフェ・オレを求め、ベンチで食べる。暖かくて美味しい。のんびり過ごし、友人らへの手紙を書く。構内を散歩し、郵便局で切手を調達。単なる切手売りだけではなく、貯蓄等を含めたフル規格の郵便局が空港内の便利な場所に普通にあるのが偉いと思う。再び第2ターミナルに戻り、ターミナル2Cに移動する。確か、昔はこのターミナルから成田線が発着していた筈である。ビル内に、昔はなかったスーパーマーケットの「カジノ」が入っていたりする。空港内なので売る物は限られているし、見たところ物価も高いがそれでもないよりは良いに違いない。出国ゲートが空いているうちに出国し、免税店を散策。ユーロが安くなった所為で、並んでいる商品にもぐっと値頃感が出てくる。コートジボワールのコンサルタントに電話しておこうと思ったが、電話が通じない。次善の策でパソコンを無線LANに繋ぎ、メールを送る。すると、向こうから電話がかかってきたので、予定通り今夜アビジャンに着くことを告げる。学生の頃は、空港のロビーでラップトップを拡げたり携帯電話であれこれ話しているビジネスマンたちを見て、随分せわしないものだなと思っていたのだが、今まさに自分があの日見た大人たちそのものになっていることに気づく。アビジャン行きエール・フランス702便は定刻にチェック・イン。暇に任せて行列の最前列に陣取っていたので難なく荷物を棚に積む。成田線と同じボーイング777だが、座席は9割方埋まっている。離陸前からグッスリ眠ってしまう。気がつくとミール・サービス。今度はしっかり食べておく。また眠った後、お手洗いに行こうとすると通路にカートが横付けされていて、飲み物を自由に持って行かれるようになっている。アビジャンではジュースも買いに行けるか分からないのでトニック・ウォーターを数本失敬してカバンにしまっておく。飛行機は定刻より1時間弱遅れてアビジャン空港に着陸。ボーディング・ブリッジに出ると、意外なほど清潔な空港ビルに吃驚する。床は入念に磨きあげられており、ゴミひとつ落ちていない。トランクがなかなか出てこないので不安になるが、15分ほど待つと現れてひと安心。ゲートをくぐると、コンサルタントとホテルマンが2人で出迎えてくれている。これまでメールと電話でやり取りはしていたが、お互いに初めてなので自己紹介がてら雑談を交わす。ホテルのミニバンはシトロエンの新しいクルマで安心する。市内に向かう道は片道4車線ほどあり、渋滞もない。
「コートジボワールは危険だって聞いてたけど、見たところ全然平気じゃん」
と聞くと、コンサルタント曰く、
「こう見えて危険だから、十分気をつけて」
との由。ホテルには22時近くに到着。内装は古びているが、清潔で申し分ない。お腹が空いてきたので、ルームサービスで鶏肉を頼む。シャワーを浴びてから眠る。

ルーム・サービス
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