終戦内閣・鈴木貫太郎総理の下、陸軍大臣を務めた阿南惟幾。

一死、大罪を謝す―陸軍大臣阿南惟幾 (PHP文庫)
角田 房子
PHP研究所
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乃木将軍に見初められた幼少期から陸軍大臣就任までの生い立ちが綴られた後、ポツダム宣言受諾そして切腹に至るまでの日々に多くのページが割かれる。
中佐時代、侍従武官として天皇陛下のお側にあり、時の侍従長・鈴木貫太郎との出会いを果たす。
その後支那出征の際、陛下から2人きりでの会食という前代未聞の栄誉を賜った阿南は、その感激を和歌に記す。

大君の 深き恵みに浴みし身は 言い遺すべき 片言もなし

敗戦の色濃くなった昭和20年(1945年)、かつて侍従長だった鈴木貫太郎が総理に就任し、自ら陸軍省に赴き阿南を陸相に迎える。天皇ご自身が異例の意思表明までされ、ポツダム宣言受諾に向かう鈴木内閣にあって、陸軍を代表する阿南は、陛下の意に背いて飽くまでも徹底抗戦を主張する。しかし、敗戦が決まった夜、陛下から下賜されたワイシャツを着て、あの和歌を辞世にして、こころの内を誰にも明かさないまま阿南腹を切る…
果たしてその真意はどこにあったのか。
最後のサムライが生きた最後の日々に迫った、読み応えのある一冊。