かのサッチャーが規制緩和の最たるものは減税だと看破していたけど、これは製造業にもサービス業にも言えることで、客にとって最大の恩恵は値下げだと思う。付加価値の創出を値下げしない言い訳にしたり、あまつさえ値上げの口実にしてはいけないんだと思う。
 
本当に客のことを考えた施策をしているのか、単に自社の収益確保のために理屈をこねてサービスしたふりをしているのかについて、客の方は案外簡単に見抜くものだと思う。そうは言ってもみんな営利企業で簡単に出血はできないから、人の営業力、自社を選ばせる説得力が必要になるんだろう。
 
もっとも分かりやすい、人を動かしやすい説得力は「あなただけ特別です」と言ってしまうことだろうと思うけど、それを乱発すればやがて特別はインフレを起こして価値が下がってしまうし、特別を提供する側の負担も増える。そしてまた特別を当たり前に思うようになった客は更なる優遇を求めるようになる。

特別のインフレーションってのは、いわゆるお受験戦争も似たようなもので、私立の進学校に行って良い教育を受けて良い大学に入って良い会社に入れば幸せって信じて、誰も彼もが子供に莫大な投資をして、その結果全員が幸せになっているだろうか? 親は投資を回収できているだろうか?
 
自分が向かうべき道がどこで、得たいものをどうやって得るのかっていう本質を見失うと、人を出し抜くこと自体が目的になって、エネルギーを注ぐ方向が間違ってしまうんじゃなかろうか。子育てにせよビジネスにせよ、本質を見抜く眼力を持ち得ないと、なんの説得力もなくなってしまう気がする。
 
値下げは、必ずしも自分の安売りを意味するんじゃなくて、自己に相対する他者との折り合いをつける為に必要な場面もあるはずなんだ。それを見抜けない数多のハイミスたちが売れ残ってるのは周囲を見渡せばよく分かる(笑)けど、市場における価値は自分だけでは決められないこともあるんだと思う。
 

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横田 尚哉
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