日航ジャンボ機墜落事故の際、身元確認班長を務めた群馬県警刑事官による渾身の回想記。
墜落遺体 御巣鷹山の日航機123便 (講談社プラスアルファ文庫)
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飯塚 訓
講談社
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日航機の墜落場所が群馬県に確定し、県警本部長から出動命令が下る。
「刑事官、伝令にいいのを選んどいたほうがいいですよ」
「じゃあ、エイキューをくれ」
刑事ドラマさながらの雰囲気で始まる任務は、やがては想像を絶する終わりなき格闘へと変わってゆく。
ボロボロの遺体が並び、修羅場と化した遺体安置所で、懸命に、ただ懸命に働く現場の警察官、医師、看護婦、ボランティアたち。
徒手空拳で身元確認に取り組む若い警察官たちが、たちまちに仕事を飲み込んでいくさまを見て、検視医たちは半分以上本気で
「うちの大学に入れてやるよ。医師にならないか」
と言うまでになる。
「仕事で泣かないのが幹部警察官の資格条件の一つなら、私は完全に隊長失格である」と認める”泣き虫隊長”の筆者は、疲労が極限状態になった挙げ句、一時的に家族の名前が出てこなくなるほどの変調をきたす。そして、疲労の末に彼の班員がとんでもない事件を起こしてしまう…
筆舌に尽くしがたい悲劇でありながら、どこかしら温かくてユーモアさえ覚える文体は筆者の才能なのだろうが、あの世界最大の航空機事故の現場を、もっとも間近で見ていた人物の記録としてしっかりと心に刻んでおきたい。