日本を代表する映画プロデューサーである筆者が、自分を映画に惹き込ませた張本人である石原裕次郎に宛てた手紙の形式で綴る半生記。


太平洋の果実 石原裕次郎の遺したもの (小学館文庫)
増田 久雄
小学館
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日活の大スター、石原裕次郎に憧れて学生時代から石原プロのスタッフとして働きだした筆者。しかし、映画産業の斜陽と共に石原プロは経営危機に陥り、時の副社長から会社を辞めて欲しいと依願される。
「いつかまた、石原プロが映画を作るときには馳せ参じよう。その時までに、あの人のために、力をつけておかなければ…」
その思いだけを胸に、筆者の徒手空拳の映画人生が幕を開ける。海外の映画関係者との交流、行き詰まってゆく生活、そしてプルミエ・インターナショナルの設立。映画人としての自立…
食うや食わずのフリーランス時代、勝新太郎から直々に「うちに来ないか?」と誘われたのに「自分にはあの人がいますから」と断ってしまう筆者。やがて石原プロの経営は持ち直したが「俺のことをもっと利用していいんだぞ」と言ってくれたあの人は病に倒れる…
本物の活動屋の生き様は、そのまま映画のワンシーンになりそうな挿話で溢れている。
矢沢永吉のドキュメント映画を撮ることになり、本田宗一郎の長男、博俊氏にホンダのバイクを借りれないか相談に行く筆者。

「増田さん、何でホンダのオートバイなの?」
「だってオートバイって言ったら、HONDAじゃないですか」
「僕もヤザワのファンだから言うけれど、ヤザワがホンダに乗ったら、ヤザワのファンは離れますよ。(中略)ハーレーに決まってるじゃないですか。(中略)もしもどうしても国産を使いたいのなら、カワサキですよ」

学生時代、石原プロの紹介で「ジャニーズ」のマネージャを務めたこともある筆者は、メリー藤島女史に相談にゆくと、こんなことを言われる。

「誰にでもじゃないのよ、あなただから言うの。なぜかというと、あなたは知らないかも知れないけれど、あなたが本当に困った時には必ずあなたを助けるだろう人を、私は何人も知っています。○○さんでしょう、××さんでしょう、△△さんでしょう……裕次郎さんだってそうじゃない。それに、私だってそうに決まってるじゃない。あなたにはそういう人たちがいる。」

続編『石原裕次郎の贈りもの』と併せて読みたい一冊。