『鬼平犯科帳』『剣客商売』『真田太平記』などで知られる筆者が、亡くなる2ヶ月前まで8年間続けた連載。
映画の試写を観るため、週に一度は銀座を訪れる筆者が、街での出来事、日々の食事、執筆中の小説の進捗状況を、文字通り徒然と書き連ねているのだが、その淡々とした筆致の端々に「粋」としか言いようのないセンスの良さが溢れている。
読んでいて驚くのは、筆者の物凄い健啖家ぶりで、朝からビフテキやカツ丼は当たり前。銀座で揚げ物を食べ、甘いものをたっぷり味わってから帰宅して、夜の執筆にとりかかるためにしっかり夜食を取る。連載中に「お前さん食べすぎじゃないか」と友人から手紙が届いたとさえ言われている。
古き佳き時代の最後の残り香をかぐことの出来る一冊。