朝7時に起きて、ホテルの貧相な食事を避け駅前のレストランに行く。美味。近所のマークスアンドスペンサーで買い物してからホテルをチェックアウト。地下鉄でそのまま空港へ。およそ利便性という言葉からは程遠いターミナル。荷物が重くなっているのでエクセス・チャージを取られまいかと心配していたが、見るからに中華系の顔をした職員がキビキビとチェックインをしてくれ、聞き取り易い英語で香港でのトランジット手順を教えてくれる。トランク2つで55キロくらいあったが何も言われずにパスして胸をなでおろす。こんなことでハラハラしないように、会社で出張しまくってワン・ワールドの上級会員にもなっておきたいなぁ、などと邪まなことを思う。出国時、手荷物は一人一つまでと言われ、ショルダーバッグのほかにカメラバッグを持っていた僕は、妻のボストンバッグにショルダーをしまうことで許される。これでは二つと変わらないような気もするが、とにかく「一人一つ」という体裁の方が大事らしい。エックス線検査のほかに、全員が靴を脱がされるゲートまであって驚くが、リアルでテロに遭っているこの国では当たり前の対応なのだろう。搭乗まで時間があるので、免税店を見て回り、パブで一服する。妻はステラ・アルトワ。僕は機内でアルコールが回るのを恐れてコーラにしておく。複雑怪奇なゲートを抜けてCX252便に搭乗。機内食のパンがあまり美味しくない。往路は美味しかったので、恐らくは調達元、即ちイギリス人のつくるパンが不味いのだろう。「カナダはフランス人がパンづくりを教えたから美味しいけどアメリカはイギリス人がパンづくりを教えたから不味い」というジョークを聞いたことがあるが、さもありなんと思う。耳栓をして眠るが、あまり寝られずに眼を醒ましてしまう。香港空港には定刻に到着。


地下鉄(メトロ)に乗って (講談社文庫)
浅田 次郎
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