(承前)

就職懇談会のフィードバックは、その後誰からも一切ないまま時が過ぎて行きましたが、一方で僕が気になっていたのは、山岸真太郎さんからオファーされた同窓会役員就任の話。

2014年の就職懇談会の後の飲み会が始まる前、当時同窓会会長だった南舘英孝先生がわざわざ近づいてきて
「酔っ払ってしまわないうちに」
と僕の袖を摑み、例の美声で
「山岸くんから話は聞かせてもらった」
「来年度は同窓会役員の改選時期にあたる。この機会にぜひミズノ君に役員に立候補していただきたい」
「ミズノ君の熱心さには私も心を打たれた」
「ミズノ君には同窓会役員になってもらって、是非とも同窓会を改革していただきたい」
とたいそうな持ち上げようで、こちらとしては面映いばかりでしたが、南館英孝先生は在学中に講義を受けたこともある恩師の一人でもあり、わざわざ頭を下げられてはこちらも無下に断るわけにもゆきませんから
「はい、分かりました。ではやらせていただければ」
と回答しました。

そして、来年度というからには2015年の3月には人事案が決まるのだろうと思っていました。
しかし、年が明けて3月が過ぎても何の連絡もない、長い長い不気味な沈黙。もとより、僕からお願いしたり持ちかけた話ではなく、南舘英孝先生と山岸真太郎さんからオファーがあってのことだから、待つしかありません。

ところで、僕が就職懇談会を眺めていて少なからず心許ない気持ちになったのは、就職懇談会は同窓会とフランス語学科の共催ということでした。眺める限りの実態として、会合の殆どは同窓会側が取り仕切っているように見えましたが、共催者として名を連ねている以上、学科なり先生方の対応があんなに粗雑でみっともないものなのかと卒業生に思われてしまったら、それは学科の利益にならないのではないかと思えました。

学科の先生のお仕事は、ご自分の専門分野の研究であったり、講義や演習で後進を育成することはもちろんでしょうが、もう少し長い眼で、学科のバリューを高めてゆく施策に取り組んでいるようには見えませんでしたし、過去2年間の懇談会の態様を眺めている限り、同窓会にもそうした考えがあるようには到底思えませんでした。

バリューと言っても一概には定義しがたいでしょうが、例えば、この学科で勉強した結果、何が身について何が役立つのかという経験について、卒業生という生きた題材からフィードバックを得て、教育指導なり、学科の宣伝の為のヒントとして取り込んでゆくことができれば、学科の価値は自ずと高まってゆくであろうと思うのです。
そしてその為には、卒業生に振り向いてもらう、学科の発展に向き合ってもらうことが必要になると思うけれど、現実には、同窓会組織が毎年直前になって慌てて懇談会への参加を呼びかけても、卒業生は思うように集まってくれません。

同窓会としては、年に一度の共催イベントをやりさえすれば内向きの実績を重ねることが出来て、会報に載せる文書や写真は整えられて満足かも知れません。幼子がままごとや紙芝居で同じことを繰り返すのを見て、周囲の大人が「ああよかったね」と拍手してあげるように、同窓会会員は運営側を適当に褒めるフリをしてあげればそれで良いのかも知れません。しかし、現実には、運営しているのも参加しているのも幼子ではありません。自分の時間を割いてやって来た参加者が「あれはない」とまで酷評しているのに、同窓会役員である山岸真太郎さんは、先に見た通り、そのやり方を変えるつもりがないと明確に宣言して、やったらやりっ放しを続けているのですから、何の知識も経験も提言も蓄積はされはしないでしょうし、協力してくれる人が減りこそすれ増えることはないのではないでしょうか。そうしたやり方が、学科の将来の為になるのかどうか、僕が心許ないと思った所以です。

たとえ僕が同窓会の役員になったからといって、いきなり多くのことを変えたり、かなえたりは出来ないでしょう。ただ、学科の利益が何かを考えて、学科の価値を高めるという目的意識を持って、同窓会の活動が、学科や学生の何の役に立てるのかという視点から眺めれば、改善できる事柄は嫌でも眼に入るでしょうし、よりよく出来るように少しずつでも手をつけてゆけば良いだけの話。誰だって最初からフランス語がペラペラだったわけではなかったのと同じ。

ところで、年度が変わって4月になっても、誰からも何の連絡もありません。最初にオファーをしてきた山岸真太郎さんからも、南舘英孝先生からも。
こちらから問い合わせるのもおかしな話だと思いつつも、請われた約束は果たさねばならないでしょう。僕は山岸真太郎さんから請われた「来年は是非他の卒業生をお誘いください」との約束も履行してきましたから。
ともあれ、4月17日に僕は南舘英孝先生にメールを書ました

南舘先生

ご無沙汰しております。フラ語の水野です。

昨秋、就職懇談会の際に、同窓会役員への立候補のお話を頂戴しましたが改選時期はいつ頃になりますでしょうか?
また、改選の際の手続き等事前に必要なこと(私自身の出席、書類手続等)はありますでしょうか?

私事ながら、出張で東京を空けることも間々ありますので日取りが大まかでも決まっているようであればスケジュールを予め押さえておければと考えている次第です。

お手数をお掛けいたしますが、ご教示いただければ幸いです。
よろしくお願い申し上げます。

水野 信隆

すると、2日後の4月19日に南舘英孝先生からお返事が届きました

水野 信隆 さま、

いつも学科同窓会のことでお世話になっており、ありがとうございます。
お問い合わせいただいた件ですが、ご連絡が遅くなって大変申し訳ありません。

改選は、5月のASFの日(31日)に合わせて開催する総会で行われるのですが、先日の役員会で来期の役員(常任幹事)の候補を相談しましたが、役員の定員のことや役割の分担、また以前から挙がっていた候補との関係やらで、誠に勝手ながら今回の水野さんの役員就任は見合わせていただくことになりました。お声をかけておきながら、このようなことで、本当に申し訳ありません。
またいつかの機会にということでご了承をいただければありがたく思います。よろしくお願いします。

変わらずお忙しそうですが、お身体に気をつけられてお励みください。また、何かの機会にお会いしたいと思います。

南 舘

【引用者註】ASF:オールソフィアンズフェスティバルの略。2015年の開催内容は公式サイトを参照

南舘英孝先生は、先にも述べた通り僕の恩師の一人ですが、声をかけるだけかけておいてあとは知らんぷり、当人から問い合わせを受けてようやくご回答という姿勢は全くもって意味不明。僕が問い合わせなかったらいつまでだんまりを決め込むおつもりだったか。黙っていれば僕がフェイド・アウトしてくれると期待なさっていたのか。だとしたら僕は先生のご期待には応えられなかったことになりますが、後になって、同窓会役員は3月に入って間もなくスンナリ決まっていたという話を人づてに聞いたので、これが事実だとすれば、1ヶ月以上も僕は放置されていたことになります。

それにしても、「ミズノ君の熱心さには私も心を打たれた」「ミズノ君には同窓会役員になってもらって、是非とも同窓会を改革していただきたい」とのお言葉は一体なんだったんだろう、人を熱心に誘うフリをしておいて、実際には役員の頭数さえ揃えば、改革も何も関係ない、あとは野となれ山となれだった、いわば平気でウソをつく人のことを、この僕は先生だなんて呼んでいたんだ、という軽くない失望がありました。
大学教授として功成り名遂げて退官なさった大先生が、卒業生のひとりをなおざりにしたところで、痛痒を感じることなどなかったでしょうし、最初の勧誘とは全然違う言い訳をおっしゃってはばからない以上、この僕はその程度の、耳あたりのいい誘い文句でキープしておいて、要らなくなれば切り捨てる雑魚として扱われていたんだろうと思うほかありません。ご本人はメール1通で一応謝る体裁を取って、それでもう一件落着だと思っているのでしょうし。

今回、細かな話の説明に随分紙面を費やしたのは、「卒業生など持ち駒のひとつに過ぎないから、どんな無礼な対応をしたって構わない」と思われても仕方ない態度や、平気でウソをついて人を愚弄し取り繕う態度が、就職懇談会の拙劣な仕切りに限った話ではなく、同窓会役員になぜか等しく備わっている気質であり、その底流にある無自覚で傍迷惑な傲慢さが、後に個人情報無断開示・漏洩を引き起こす大きな原因のひとつになったのだと、僕が確信しているからにほかなりません。

かくして、かつて先生と呼んでいた御仁とも、面妖な同窓会組織とも、今後関わり合いになることはないだろうと思っていたのですが、それからさほど間をおかずして、僕はまた同窓会の別の話に巻き込まれてゆくのでした。

(つづく)

フランス語学科同窓会の対応まとめ

鍋島宣総(フランス語学科同窓会事務局長)
「同窓会では、把握している会員の情報の取り扱いには十分注意しています。第三者からの情報提供依頼があった場合には,必ずご本人のメールで了承を受けた上で対応するようにしています。」
→ ウソでした
山岸真太郎(フランス語学科同窓会副会長)
「もしよろしければ、来年役員の改選がございますので、ぜひメンバーに加わっていただき、議論を進めてまいりませんか?」
→ ウソでした
南舘英孝(フランス語学科同窓会会長)
「ミズノ君には同窓会役員になってもらって、是非とも同窓会を改革していただきたい」
→ ウソでした
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